ホワイトストーンへの愛!
最後に愛は…
彼も、きっと思っていただろう。
あの馬への愛が、これほど悲しい定めを背負うなんて。
彼がその馬に、一目惚れしたのは、1990年のダービー。
アイネスフウジンが逃げ切ったレースとして記憶されたこのレースで,
彼が狙っていたのは、12番人気の馬、ホワイトストーン。
混戦の2着争いのどさくさにまぎれて3着に突っ込んできた白い馬体に、
彼は完全に惚れてしまった。
しかし、彼とホワイトストーンの愛の日々は、地獄を生んだ。
彼のホワイトストーンに対する愛はあまりにも純粋すぎて、
単勝という形でしか表現できなかった。
オグリキャップの引退レースとなった有馬記念。
1番人気、ホワイトストーンの単勝に、彼は全財産をつぎ込んだ。
そして結果は、ご存知の通り。
日本じゅうがオグリキャップのラストランに涙する中、
彼は生活費を捻出するために、友だちに借金しまくるしかなかった。
人気になっては、凡走を繰り返すホワイトストーン。
やがて、彼は愛の証明である単勝の馬券を買う金すらなくなった。
それでも、引退レースとなった札幌記念の単勝は2番人気の5倍。
本当に、最後の最後、絞り出すように集めたお金を、彼はつぎ込んだ。
ホワイトストーンの単勝に!
祈るように、モニターを見上げる彼の前で、見事にホワイトストーンは・・凡走した。
10着。
愛を信じ、愛を貫いた彼には借金だけが残った。
競馬の神は、厳かにいった。
馬に、惚れるな。冷静になれ。